第3話 人と植物の関係性を描く

──2018年にUターンされて、久々の地元は浅野さんの目にどう映りましたか。

 

子供の頃とは違った植物が目に入ってきました。知っている道なんだけど、今まで気付かなかった植物が生えていたりして。今年は特にコロナ禍でまちの外に出なかったこともあり、身近な植物がより面白く感じるようになりました。子供の頃、ちょっと森になっているところとか、多賀城廃寺跡とか、東北歴史博物館裏のあたりとかで遊んでいて、そんな場所に意外とあけびの蔓があったり、野生のせりが生えていたり。山形で覚えた山の植物にも出会えました。多賀城は都市化が進んでいますが、ちゃんと自然も残っている。

 

──植物を描くようになったきっかけは何だったのでしょうか。

 

もともと木の実とか植物の形とかがすごく好きで絵を描いていたのですが、山形の美大に進学し、山奥の湯治場に滞在し土地のことを訪ね歩いて描いた経験が大きかったです。植物が人の手によって調理されて保存食になっていくことに魅力を感じて。そこから、受け継がれてきた知恵や、植物を取り巻く色んなものに目を向けてみたら面白いなと思うようになりました。

──そういった技や知恵を残したいという気持ちが描く原動力になっているのですね。

 

それもありますが、一番は出会った人たちが描きたいと思える刺激をくれるんですよね。自分が刺激を受けたくて動き回っているところが大きいです。

 

──多賀城で植物と人という観点からは何か見えてきましたか。

 

東北歴史博物館裏の今野家住宅には無花果とかナツメ等の庭木がたくさん植えられているのですが、山桑、キイチゴ、ニワトコ、ヤマモモなどは博物館の方が持ってきて植えたものだそうです。毎年実をつける頃、いつのまにか近所の方が収穫していたりすると聞きました。

 

──みんなが大切にしている場所なんですね。

 

さざんかの森も子供の頃の遊び場だったのですが、そこは多賀城で結婚した夫婦が植樹してできた森だったりとか。あやめ園も遠足で行くような身近な場所ですが、毎年手入れをしているボランティアさんがいるんです。戻ってきたからこそ見えてくるものがありました。

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──そういった視点から見てみると、まちの風景が違って見えそうです。

 

今年亡くなったおばあちゃんの思い出や、家族との記憶と結びつくこともあります。小さい時におばあちゃんとよもぎを取りに行って草餅を作ったり、外から植物を取ってきて庭に植えていたこととか。今思うとその植物はカキドオシだったことに気付いたり。庭では季節ごとに綺麗な花が咲き始めて、おばあちゃんが近くの島から持ってきて植えた花もあって。小さな庭の中にも人が関わって息づいている植物があるんです。

 

──そんな中で多賀城の植物カルタが生まれたんですね。

 

通勤路で見つけたマムシグサという植物が、花の形がちょっと変わった植物で。それを描いてみたくてドローイングをしていたのですが、そこからおばあちゃんとの思い出の植物も面白くなってきて。展示もしつつ何か出来たらいいなと思っていた時に、コロナ禍でアーティストに機会を与えてくれる多賀城市の事業を見つけて参加することになり、カルタだったら植物との思い出などの言葉を添えられるし、みんなで楽しく作れそうだなと思ってウェブワークショップを企画しました。私が描いたカルタをプレゼントして、参加者の皆さんにも画面越しに身近な植物を描いてもらいながら、そのエピソードも話してもらって。ラジオみたいで楽しかった。私も気付かなかった植物やお話を聞くことができ、とても良い機会になりました。

浅野友理子/アーティスト。2015年東北芸術工科大学大学院工学研究科修士課程修了。出会った人々から聞いた土地に受け継がれる植物のエピソードを記録するように描いている。2020年VOCA展にて大原美術館賞受賞。