第4話 小さな福のおすそ分け

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常連:よっ! 今日もいい匂いに釣られて来ちゃったよ。

 

店主:いらっしゃいませ。お客さんが好きな豆焼いといたよ。

 

常連:この店に通い始めて15年になるけど、マスターに変わる前から来てるからかなり古株だよな。ところで、そもそも何でお店を引き継ぐことになったの?

店主:前の店主が体壊しちゃって店閉めることになって。でも、お客さんみたいな人が来るから、「はい、おしまい!」って言えなかったんだよ。ここだけの話、当時保険会社で仕事してたから副業できなくて、お袋に店立たせて裏方で焙煎してさ。大変だったよ。

 

常連:味も変わったよね。前の人のも好きだったけど、やっぱりマスターの豆が俺には合ってるな。

 

店主:今の焙煎機になる前はお客さんが来る度に焙煎してたから大変で、やり方変えたんだ。金沢大学で珈琲の研究をしている教授を紹介されて、そこで使ってる遠赤外線焙煎機を導入して。東北ではウチだけ。遠赤外線だから豆の膨らみが大きいのが特徴で、芯の方から温まって通常よりも低い温度で煎るのでまろやかに仕上がる。

 

常連:どこの珈琲とも違う味わいだな~と感じてたけど、そんなすごい機械使ってたんだ!

 

店主:どこかで修行したわけじゃないからね。腕はない。だから焙煎機頼りだし、豆も色んなルートから良いものを仕入れてるよ。

 

常連:同じの買っても、いつもと違うな~って時があるけど(笑)。それもまめ福の味だよね。そういや、まめ福っていい名前だよね。

 

店主:実は前の屋号だった「まめや」と「福室電器」を合わせたものなんだよ。当時看板を全部直す費用もなかったのもあってね、「や」を「福」に変えただけ(笑)。この店舗は昔親父が電気屋をやっていた時に使っていた場所で、そういう思い出も残したいなって。お袋も電気屋の時に鍛えた接客スキルが活きて生き生きしてるでしょ(笑)。

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常連:おばあちゃんとの会話もここに来る楽しみでもあるなぁ。

 

店主:後付けだけど、「小さな幸せをみなさんに」っていう意味も店名に込めてるよ。近々やっと新しいロゴとか、パンフレットとかも完成予定で、本腰入れる覚悟も出てきてさ。仕事も副業できるファイナンシャルプランナーに転職して、自由に時間を使えるようになったから、やりたいことどんどんやっていこうと思って。

 

常連:おー!

 

店主:珈琲屋のモカソフトって、興味ある? 実は前にイベント出店した時に、妻がタピオカドリンクを出したらさ、子どもたちがお金握りしめてニコニコしてくるんだよ。珈琲って子どもにはあまり縁がないでしょ。だから子どもたちにも喜ばれるもの作りたいなと思ってね。

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常連:俺もソフトクリーム大好き! そういや、珈琲味のソフトクリームってそんなに見ないな。

 

店主:モカソフトって、余るとその日のうちに材料を全部処分しなきゃなんない。だから利益なんて出ないんだけど、多賀城の名物にもなったら嬉しいよね。

 

常連:確かに多賀城って目立ったものないから知名度低いしね。

 

店主:だから多賀城物語っていうドリップバッグ作ったりしてるんだけどね。多賀城には美味しいお菓子がたくさんあるから、それと一緒に飲んだ時に相乗効果が生まれるようにブレンドしてる。

 

常連:俺もよくお土産に使わせてもらってるよ。お菓子と一緒に親戚に送ったりね。マスター、商店会の会長もしてるし、多賀城愛が深いよね。そもそもお客来るから店続けようって、普通の人は考えないよ。

 

店主:楽天的だからね。なんとかなるだろうって。ありがたいことに人生の節目節目で大変な時に助けてくれる人が現れたり、ラッキーなことが舞い込んでくる。お客さんとの出会いも俺にとっては幸せなことだったし。

 

常連:いや~俺だっていつも美味しい珈琲飲ませてもらって、良い時間をもらってるよ!

土田義徳/まめ福店主。2005年まめ福をオープンし、全国でも珍しい遠赤外線焙煎機を導入した。イベント出店や、商品開発、さらには商店街の会長までこなすオールラウンダー。